営業・実務

案件・要員管理のExcel脱却をいつ判断するか|5つの閾値

#システム選定#実務#実データ
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執筆
Qasica 編集部

案件と要員の管理をExcelでやめるかどうかは、 「件数が増えたから」では判断できません。 10,000行のExcelでも回っている会社がある一方で、 300行で破綻している会社もあります。違いは件数ではなくExcelが構造的に扱えない処理が業務に入っているかです。

Qasica の実データから、その境目を5つの閾値にしました。1つでも当たっていれば検討の価値があり、3つ当たっていれば時間の問題です。

結論|件数ではなく、壊れ方で判断する

#閾値Excelで何が起きるか
11営業日に届く案件が20件を超えた転記が追いつかず、入力しない案件が出る
2同じ案件が何度も届く完全一致では重複を検出できず、件数が水増しされる
3「空欄」の意味が分からなくなった未記載と未入力が区別できず、聞き漏らす
4突き合わせる条件が4つを超えたフィルタの掛け直しが常態化し、見落としが出る
5担当者が2人を超えた同じ要員に別々の担当が提案する

閾値1|1営業日に届く案件が20件を超えた

Qasica に案件が届いている会社を見ると、30日あたりの受信件数の中央値は 1,465 件でした。 営業日に均すと1日あたり約70件です。 最も多い会社では30日で 29,301 件、1日あたり約1,465件届いています。

集計日 2026年9月22日/直近30日に案件の受信があった 10 テナントの分布。 最小 2 件、中央値 1,465 件、最大 29,301 件。この数字で分からないこと:各社の事業規模や営業人数 (件数の差は主に取引先の数と、相手の配信設定の差を反映します)。 テナント数が少ないため、中央値は代表値としては弱い数字です。 また、これは Qasica を使っている会社の分布であって、業界全体の平均ではありません。

なぜ 20件 なのか。案件メール1件から条件を読み取って転記するのに、 慣れていても 3〜5分はかかります。20件で 60〜100分。 案件の 43.8% が 9〜11時に集中して届くことを踏まえると、朝のピーク3時間が転記だけで埋まる水準が 20〜40件です (SES営業の1日)。

この水準を超えると、転記されない案件が出ます。Excelが壊れるのではなく、Excelに入る前で情報が落ちるのが実際の壊れ方です。

閾値2|同じ案件が何度も届く

最も効く閾値です。Qasica に届いた案件 195,223 件のうち、119,686 件(61.3%)が再送と判定されています。 要員側はさらに高く、174,776 件のうち 138,595 件(79.3%)が再送でした。

集計日 2026年9月22日/案件 n = 195,223、要員 n = 174,776(いずれも削除済みを除く)。 「再送」は同一の送信者から30日以内に、ほぼ同一の本文で届いたものを指します。 本文の完全一致・正規化後の一致・近似一致(Jaccard 0.95以上)の3段で判定しています。この数字で分からないこと:別の会社から同じ案件が回ってきた場合 (送信者が異なるため別件として数えており、実際の重複はこれより多いと考えられます)。

ここが Excel の限界です。再送は本文が完全に同じとは限りません。 挨拶文、担当者名、日付、単価の表記だけが変わることがあり、 Excelの完全一致や COUNTIF では検出できません。

重複が判別できないと、件数も提案率も実態からずれる。 「今月3,000件届いた」が実際には1,160件だったとき、 そのうえで組んだ目標値はすべて意味を失う。

同じ案件に何度も提案してしまう、という直接的な事故も起きます。 KPIへの影響はSES営業のKPI設計にまとめています。

閾値3|「空欄」の意味が分からなくなった

案件メールには、そもそも書かれていない項目が大量にあります。

項目記載率欠けたときに起きること
契約形態57.4%準委任か派遣か分からないまま常駐させる
外国籍可否70.1%提案後に断られる
商流75.4%出せない要員を提案する
単価77.9%金額の話がこちらから始まる
勤務形態85.3%要員の希望と合わずに辞退される

Excelでは、「メールに書かれていなかった」と「転記していない」が どちらも空欄になります。区別するには列を増やすしかなく、 運用ルールを守れる人数には限りがあります。

契約形態が 57.4% しか書かれていないということは、4割以上の案件について「聞いたかどうか」を管理しなければならないということです。これが回らなくなった時点で、空欄は情報ではなくなります (案件メールの読み方)。

閾値4|突き合わせる条件が4つを超えた

案件1件に対して提案できる要員を探すには、最低でも地域・商流・勤務形態・単価の4つを同時に見ます。 実データで段階的に絞るとこうなります。

条件残り件数全体比
全要員174,776100%
+ 再送の重複を除く36,18120.7%
+ 地域が関東27,00715.5%
+ 所属が自社社員15,3348.8%
+ フルリモート希望でない12,5197.2%
+ 単価70万円以下7,2774.2%

集計日 2026年9月22日/n = 174,776。スキル一致・稼働開始時期は含めていません。 条件の各値は実データの最頻ケース(案件の 81.6% が関東、 商流条件つき案件の 92.8% が「貴社まで」、提示上限の中央値 70万円)に合わせています。

残るのは 4.2%。しかもここにスキルの一致が入ります。 案件の必須スキルは中央値3個、上位25%で5個、上位10%で7個あり、 これを配列の部分一致で見なければなりません。 Excelのフィルタでこれを毎回掛け直すのは、件数が少なくても負担が大きい作業です。

さらに、表記ゆれの問題があります。「Java」「JAVA」「Java8」が別の値として入っていれば、 フィルタは静かに取りこぼします。間違った結果が、エラーを出さずに返ってくるのがこの閾値の危険なところです。

閾値5|担当者が2人を超えた

Excelファイルは同時編集に弱く、 「案件管理_最新_v3_田中.xlsx」が増えていきます。 実務上の事故は次の2つです。

  • 同じ要員に別々の担当が提案する — 提案先から見ると同じ人が2社から届き、単価も条件も違う。信用を落とします
  • 誰がどの取引先を持っているか分からなくなる — 直近90日で要員・案件メールを受け取っている会社の送信元ドメイン数は、 1社あたり中央値 19.5、上位10% で 277、最大 702 でした。 取引先が数十社を超えると、担当の割り当てを記憶では管理できません

集計日 2026年9月22日/直近90日に受信のあった 18 テナントの、送信元ドメイン数の分布。この数字で分からないこと:ドメイン数は取引先の社数と一致しません (1社が複数ドメインを使う場合、配信専用ドメインの場合があります)。

Excelのままでよいケース

逆に、次の条件がすべて当てはまるならExcelで十分です。

  • 取引先が 5社以下で、案件が 1日 10件未満
  • 営業が 1〜2人で、名簿を共有する必要がない
  • 要員が自社社員だけ(商流の突き合わせが不要)
  • 再送がほとんどない(定期配信のリストを受け取っていない)

この規模で管理システムを入れても、入力の手間が増えるだけになりがちです。 システム選定そのものの考え方は人材派遣管理システムの選び方に整理しています(SESと派遣では必要なものが別である点も書いています)。

移すときの順番

全部を一度に移そうとすると失敗します。 上の閾値のうちいま当たっているものから順に外していくのが実際的です。

  1. 受信を自動化する(閾値1・2) — 転記をやめ、重複を機械的に判別する。ここだけで朝の3時間が空きます
  2. 条件を構造化する(閾値3) — 「未記載」と「未入力」を別の値として持つ。聞くべき項目が自動で出るようになります
  3. 突き合わせを自動化する(閾値4) — 地域・商流・勤務形態・単価・スキルを同時に評価する。表記ゆれの吸収もここ
  4. 担当と履歴を1か所にする(閾値5) — 誰がいつ誰に提案したかを残す。二重提案が止まります

過去のExcelを全件移行する必要はありません。古い案件はほぼ使えない(稼働開始時期が過ぎている)ので、 移行は要員名簿と取引先だけにして、案件は新規受信分から始めるのが早く立ち上がります。

よくある質問

何件になったらExcelをやめるべきですか?

件数だけでは決まりません。届く案件メールは1社あたり30日で中央値1,465件(営業日あたり約70件)ですが、そのうち61.3%は再送です。重要なのは件数そのものではなく、重複の判別・欠損の扱い・複数条件の突き合わせという3つのうち、どれかが人手で回らなくなっているかどうかです。この記事では5つの閾値として整理しました。

Excelのどこが最初に壊れますか?

重複の判別です。届く案件の61.3%は同一送信者からの再送ですが、本文の言い回しが少し変わるだけでExcelの完全一致では検出できません。結果として同じ案件が別行として積み上がり、件数も提案率も実態からずれていきます。

スプレッドシートに移せば解決しますか?

共同編集と履歴は解決しますが、重複判別と条件の突き合わせは解決しません。この記事の閾値1・3・4に当たっているなら、Excelからスプレッドシートへの移行では効果が薄いと考えられます。

閾値1〜4を自動で外す

Qasica は届いた案件・要員メールから条件を自動で読み取り、 再送を判定して1件にまとめ、商流・地域・単価・勤務形態・スキルで 提案できる組み合わせだけを残します。 転記と重複判別と突き合わせを人がやらない状態にするのが役割です。

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