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単価交渉で使える材料|「相場です」では動かない

#単価#交渉#実データ
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執筆
Qasica 編集部

「相場ですので」は交渉の材料になりません。相手も同じ相場を見ているからです。 動くのは比較対象を出したとき—— 同じ条件の別の案件がいくらか、条件を1つ変えると何万円動くか、を示したときです。

Qasica に届いた案件と要員のデータから、実際に交渉の席に出せる材料を5つ整理しました。

結論|相場ではなく比較対象を出す

案件側が出している提示単価(上限)の分布は次のとおりです。

分位25%中央値75%90%
案件の提示上限60万70万85万100万
要員の提示単価56万68万80万95万

集計日 2026年9月22日/案件 n = 137,103(提示上限が 20〜200万円のもの)、 要員 n = 174,776 のうち単価記載のあるもの。削除済みは除外。

案件の中央値 70万に対して、要員の中央値は 68万。 分布そのものはほぼ重なっていて、ここから「平均的に高い/安い」という話はできません。 交渉で効くのは分布の中心ではなく、条件を1つ変えたときに何万円動くかのほうです。 以下の5つがその材料になります。

材料1|レンジ案件は68.4%。上限が本命

単価の上限と下限の両方が書かれている案件 56,454 件のうち、68.4%(38,608件)が「60〜70万」のようなレンジ提示で、 残る 31.6%(17,846件)が単一の金額でした。

レンジ案件の下限の中央値は 65万、上限の中央値は 70万。幅の中央値は 5万円です。

レンジで書かれた案件に、下限で提案してはいけない。 何も言わずに出すと下限で話が進み、5万円を自分で捨てることになる。

提案時点で「レンジ上限の70万でお願いします」と書くだけで、交渉らしい交渉をせずに 5万円動きます。逆に面談後の引き上げはほぼ通りません。レンジ提示は、交渉の余地があることを相手が明示している状態だと考えてください。

材料2|同じ経験年数でも所属で5万円動く

経験年数を 5〜10年に揃えて、要員の所属別に単価中央値を見ると次のようになります。

所属件数中央値
1社先(協力会社の社員)12,54470万円
弊社(自社の社員)23,66965万円
グループ会社1,16155万円

自社社員より協力会社の要員のほうが 5万円高い。これは実力差ではなく、提案する会社のマージンが乗っているからです。 交渉の場面ではこう使えます。

  • 買う側として — 同じ経験年数なら自社社員のほうが5万円安い。提案を受ける側は、所属を聞けば価格の内訳が推定できる
  • 売る側として — 自社社員を65万で出しているなら、同条件の1社先案件が70万で流通していることを比較対象に出せる

この構造の詳細は多重下請け構造の実データで扱っています。

材料3|役割の差は工程の差の3倍

「上流工程に行けば単価が上がる」とよく言われますが、データでは工程による差は小さいです。

工程中央値役割中央値
要件定義80万コンサルタント95万
基本設計75万アーキテクト90万
詳細設計70万PM90万
開発70万PL85万
テスト70万PMO80万
運用保守70万SE70万
  テスター65万

工程の幅は 70〜80万で10万円。役割の幅は 65〜95万で30万円。交渉で持ち出すなら「要件定義から入れます」より 「PL として入れます」のほうが 3 倍効くということです。

実務上の使い方としては、スキルシートの職務経歴に役割名を明記させるのが最も安上がりな単価対策になります。 詳しくは工程と役割で単価はどう変わるかにまとめています。

材料4|商流を1段許すと5万円乗る

案件側が許容する商流の深さ別に、提示単価の中央値を見ます。

商流条件件数中央値
貴社まで99,80670
1社先まで1,73975
2社先まで14985

商流を1段深く許す案件は 5万円、2段では 15万円高い。 ただし件数を見てください。1社先まで可の案件は 1,739 件、2社先までは 149 件しかありません。 商流条件を書いている案件の 92.8% は「貴社まで」です。

つまりこの材料は「協力会社の要員でも受けてくれる案件は高い」ことを示す一方で、そういう案件は滅多に流れてこないことも同時に示しています。 交渉材料としては「商流を緩めていただければ候補が増えます」という形で使うのが現実的です。

材料5|勤務形態を緩めると7万円上がる

勤務形態件数中央値
常駐48,15268
リモート可42,63172
ハイブリッド8,64672
フルリモート14,60975

常駐 68万に対してフルリモート 75万。差は7万円です。 「リモートだから安い」ではなく逆向きでした。

これはリモートに手当が付いているというより、フルリモートを許容できる案件のほうが要求水準が高いと読むのが自然です。 対面での立ち上げが不要なほど自走できる人を前提にしているためです。 リモート比率そのものはリモート案件の比率で扱っています。

材料1〜5の集計日はいずれも 2026年9月22日。単価は 20〜200万円の範囲に限定しています。この数字で分からないこと:実際に成約した単価(提示単価のみを集計しており、 最終的な契約金額は含みません)、エンジニア本人の給与、同一案件が複数社から届いた場合の 重複(送信元が異なる再送は別件として数えています)、 技術スタックの違い(材料2〜5は技術で層別していません)。

切り出し方と、言わないほうがいいこと

出す順番

  1. レンジの上限を最初に指定する(材料1)— 提案メールに書くだけ。ここで5万円
  2. 役割で説明する(材料3)— 「SEとして」ではなく「PLとして」。ここで15万円
  3. 条件の緩和と引き換えに出す(材料4・5)— 商流や勤務形態を相手が緩められるなら、その分を単価に振り替える

言わないほうがいいこと

  • 「相場は70万です」 — 相手も同じ数字を持っています。中央値は交渉の材料ではなく、 提示が外れ値でないことを確認するための目安です
  • 「このスキルは希少なので」 — 希少性は案件数の多さと単価の高さが一致しないため 根拠になりにくいです(技術スタック別の単価参照)
  • 単価の内訳の開示 — 材料2のとおり所属から内訳は推定できてしまいますが、 自分から割ると「マージンを削れ」という話に転換されます

単価が書かれていない案件をどうするか

そもそも案件メールに単価が書かれているのは 77.9% です。 残り 2割強は金額の話をこちらから始めなければならない案件で、 このとき最初に出した数字がアンカーになります。 条件の確認と一緒にレンジで聞くのが無難です (案件メールの読み方に確認メールの型があります)。

よくある質問

単価交渉はいつ持ち出すのが良いですか?

提案時点でレンジの上限を指定するのがもっとも通りやすく、面談後の引き上げは通りにくいです。案件データでは、上限と下限の両方が書かれている案件が68.4%あり、その幅の中央値は5万円でした。最初に何も言わなければ下限で話が進みます。

相場より高い単価を出すと落とされませんか?

案件の提示上限の中央値は70万円、上位25%は85万円、上位10%は100万円です。相場から外れているかどうかは、案件側が出しているレンジの中に収まっているかで判断できます。レンジの上限を超える提示は、根拠(役割・工程・商流)とセットでなければ通りません。

エンジニア本人の給与も上がりますか?

この記事の数字はすべて提示単価であって、エンジニア本人の給与ではありません。単価が上がっても、所属会社の取り分の決め方次第で本人の手取りは変わりません。給与の話は会社ごとの配分ルールの話になります。

条件の比較を毎回やり直さない

Qasica は案件メールから単価レンジ・商流・勤務形態・役割を自動で読み取り、 手元の要員と突き合わせます。似た条件の案件がいくらで流通しているかを その場で確認できるので、交渉のたびに集計し直す必要がありません。

関連記事:SESエンジニアの単価相場 / 工程と役割で単価はどう変わるか / 多重下請け構造の実データ

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