営業・実務

SES営業のKPI設計|提案数を追うと、重複と足切りで壊れる

#KPI#マネジメント#実データ
公開
読了
9
執筆
Qasica 編集部

SES営業のKPIは「提案数」「面談数」「成約数」に落ち着きがちですが、 この3つはどれも分母が定義されていないと機能しません。 実データを見ると、分母だと思っていた数字が そのままでは使えないことが分かります。

結論|分母を定義しないKPIは壊れる

  • 届く案件メールの 61.3% は再送。件数をそのまま分母にすると2.5倍に水増しされる
  • 要員名簿から条件で絞ると、1案件に出せるのは 4.2%。名簿の件数も分母にならない
  • 結果、提案数は「努力の量」ではなく「重複をどれだけ数えたか」を測ってしまう

KPI設計でまずやることは目標値を決めることではなく、①ユニーク案件 ②条件を満たす案件 ③提案 の3段を分けて定義することです。

壊れる分母1|受信件数(61.3%は再送)

Qasica に届いた案件 195,223 件のうち、119,686 件(61.3%)が再送と判定されています。 直近90日に絞っても 130,518 件中 80,365 件(61.6%)で、比率は変わりません。

集計日 2026年9月22日/n = 195,223(削除済みを除く全案件)。 ここでの「再送」は、同一の送信者から30日以内に、ほぼ同一の本文で届いた案件を指します。 本文の完全一致・正規化後の一致・近似一致(Jaccard 0.95以上)の3段で判定しています。この数字で分からないこと:別の会社から同じ案件が回ってきた場合 (送信者が違うため別件として数えます。実際の重複はこれより多いと考えられます)、 単価だけが改定された再送(別件として扱っています)。

要員側はさらに極端で、174,776 件のうち 138,595 件(79.3%)が再送でした。 人材リストがメールで繰り返し配信されるためです。

「今月は案件が3,000件届いた」という数字は、実案件では 1,160 件程度を意味する。 この差を意識せずに提案率を計算すると、実力の2.5倍ぶん低く見える。

壊れる分母2|提案可能要員(残るのは4.2%)

「手元に17万人の要員がいる」も分母になりません。 ごく平均的な案件1件(関東・貴社まで・常駐可・単価70万以下)を想定して、 要員名簿を条件で絞った実測値です。

条件残り件数全体比
全要員174,776100%
+ 再送の重複を除く36,18120.7%
+ 地域が関東27,00715.5%
+ 所属が自社社員(商流「貴社まで」)15,3348.8%
+ フルリモート希望でない12,5197.2%
+ 単価70万円以下7,2774.2%

集計日 2026年9月22日/n = 174,776。スキル一致・稼働開始時期は含めていません。 含めればさらに減ります。条件の各値は実データの最頻ケース (案件の 81.6% が関東、商流条件つき案件の 92.8% が「貴社まで」、 案件の提示上限の中央値が 70万円)に合わせています。

落ち幅が大きいのは 商流(15.5%→8.8%)勤務形態(フルリモート希望の除外)です。 要員の 22.4%(39,121件)がフルリモート希望である一方、 案件の 41.8% は常駐です。この2つは構造的に噛み合いません (リモート案件の比率)。

ファネルの組み直し

記号定義と見方
届いた案件メール母数そのままでは使えない。61.3%が再送
ユニーク案件再送を除いた実案件数。週次で見る
条件を満たす案件商流・地域・単価で提案対象になるもの
提案した件数①②に対する比率で見る。絶対数では見ない
面談設定案件の58.5%は面談1回で決着する
成約月次。単月の数字は母数不足で揺れる

このうち ①と②は営業本人の努力では動きません。 届く案件の量は取引先の数で決まり、条件を満たす割合は要員構成で決まります。 営業個人のKPIにしてよいのは ③ 以降です。

逆に、①と②はマネジメントのKPIです。 ①が伸びないなら取引先の開拓、②が伸びないなら要員構成の見直し (協力会社の開拓と条件の詰め方)で対処します。 個人に「提案数を増やせ」と言っても、②が小さければ物理的に増えません。

追ってよいKPIと、置き方

マネジメント側(月次)

  • ユニーク案件数(①)— 再送を除いた実案件。 取引先の開拓が効いているかがここに出ます
  • 条件通過率 ②÷① — 届いた案件のうち、何割に提案できる要員がいたか。 要員構成が市場とずれていると下がります
  • 商流が通らずに落ちた件数 — 協力会社の要員が主因なら、 自社社員の比率か、1社先まで可の取引先を増やす判断材料になります

営業個人(週次)

  • 提案率 ③÷② — 提案できる案件のうち、実際に出した割合。 絶対数ではなく比率で見ます
  • 初動時間 — 案件受信から提案までの経過時間。 案件の 43.8% は 9〜11時に集中して届くため、この3時間の処理量が結果を左右します (SES営業の1日
  • 条件確認の往復回数 — 案件メールは契約形態 57.4%、商流 75.4% しか 書かれていません。1通にまとめて聞けているかが速度に直結します (案件メールの読み方
  • 面談通過率 ④÷③ — 案件の 58.5%(記載のあるもののうち)は面談1回で決まります。 1回で決まる前提なら、事前準備の質がそのまま通過率に出ます

やってはいけない置き方

1. 提案数の絶対値を目標にする

再送の案件に何度も提案すれば数字は伸びます。 分母を定義しないと、重複への再提案が評価される構造になります。

2. 受信件数を「市場の活況」として報告する

受信件数は取引先の数と、相手の配信頻度で決まります。 取引先が1社増えただけで数百件増えることがあり、市場の動きとは別物です。

3. 全件を人が読む前提で目標を置く

1社あたりに届く案件は30日で中央値 1,465 件、営業日に均すと1日 約70件。 最も多い会社では30日で 29,301 件(1日 約1,465件)届いています。全部読んでから判断する、という前提自体が成立しません。

集計日 2026年9月22日/直近30日に案件の受信があった 10 テナントの分布。 最小 2 件、中央値 1,465 件、最大 29,301 件。この数字で分からないこと:各社の取引先数や事業規模 (件数の差は事業規模よりも取引先数と配信設定の差を反映します)。 テナント数が少ないため、中央値は代表値としては弱い数字です。

4. 単月の成約数で評価する

ファネルの最終段は件数が小さく、単月では偶然で上下します。 成約は四半期で、それ以外の段は週次・月次で見るのが実務的です。

よくある質問

提案数をKPIにしてはいけないのですか?

絶対数を目標にするのが危険です。届く案件の61.3%は同一送信者からの再送で、同じ案件に繰り返し提案しても提案数だけが積み上がります。提案数を見るなら「ユニーク案件に対する提案率」のように、分母を明示した比率にしてください。

1人あたり何件の案件を見れば妥当ですか?

実データでは、1社あたりに届く案件メールは30日で中央値1,465件でした。営業日に均すと1日あたり約70件です。全件を人が読む前提で目標を置くと、読む時間だけで1日が終わります。まず再送と条件不一致を機械的に落とし、残りを見る前提で件数を決めてください。

成約率はどれくらいを目標にすべきですか?

この記事では成約率の目安は出しません。Qasica のデータには提案の結果(成約・不成約)が十分な量で蓄積されておらず、公開できる水準の数字がないためです。分からない数字を目安として出すと、それが独り歩きします。

分母を自動で数える

Qasica は届いた案件メールの再送を自動で判定し、ユニーク案件として数えます。 商流・地域・単価・勤務形態の条件で提案できない組み合わせを先に外すので、 ①②の分母を手作業で作り直す必要がありません。

関連記事:SES営業の1日 / 協力会社の開拓と条件の詰め方 / Excel脱却をいつ判断するか

資料請求・相談はこちら

ほかの記事