契約・法務

準委任契約の成果完成型とは|履行割合型・請負との違いと契約書の確認点

#契約#準委任#法令
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執筆
Qasica 編集部
目次(7節)
  1. 01成果完成型とは
  2. 02条文で確かめる|第648条の2と第648条
  3. 03履行割合型との違い
  4. 04請負との違い
  5. 05SES契約での使われ方
  6. 06指揮命令・偽装請負との関係
  7. 07契約書で確認する点

準委任契約の成果完成型は、事務を処理した結果として得られる「成果」に対して報酬を払うと約束した準委任契約です。 2020年4月1日施行の改正民法で第648条の2が新設され、報酬の払い方が条文で定められました。

SES の契約は、月額の単価と精算幅で報酬を決める形が大半です。 そこに成果完成型の条項が入ると、報酬が払われる条件も、途中で終わったときの精算も変わります。 この記事では、条文の書きぶりを確かめたうえで、履行割合型・請負との違い、SES での使われ方、 指揮命令との関係、契約書で確認する点を順に整理します。 準委任契約そのものの説明は 準委任契約とは にまとめています。

「成果完成型」「履行割合型」は実務で使われる呼び名で、条文には出てきません。 条文は2026年10月26日に e-Gov 法令検索で確認しました。 本記事は一般的な情報の整理であり、個別の契約についての法的助言ではありません。

成果完成型とは

準委任は「法律行為でない事務の委託」で、委任の規定が準用されます(民法第656条)。 システム開発や運用の仕事を任せる契約がこれにあたります。 委任の報酬には、条文上2つの決め方があります。

  • 事務を処理したこと(履行)に対して払う。第648条。実務では履行割合型と呼ばれる
  • 事務の処理によって得られる成果に対して払う。第648条の2。実務では成果完成型と呼ばれる

どちらになるかは契約で決まります。 なお、委任は特約がなければ報酬を請求できない(第648条第1項)ので、有償の準委任はいずれにしても契約に報酬の定めがあることが前提です。

条文で確かめる|第648条の2と第648条

第648条の2(成果等に対する報酬)

委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。

2 第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。

法務省が公表している新旧対照条文では、この条は「(新設)」と示されています。 読み取れることは次の3つです。

  1. 成果に引渡しが必要なとき(報告書や設計書、プログラムを渡す場合など)、報酬は引渡しと同時に払う。 請負の報酬を定めた第633条と同じ形です
  2. 第2項で請負の第634条を準用している。 成果を得られなくなったときや、成果が出る前に契約が終わったときでも、 すでにした仕事のうち可分な部分によって委任者が利益を受けるなら、その部分を成果とみなし、利益の割合に応じて報酬を請求できる
  3. この条は報酬の定め方についての規定で、受任者の義務を変えてはいない。 受任者が負うのは第644条の善管注意義務(委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務)のまま

第648条(受任者の報酬)

履行割合型の根拠になるのが第648条です。 報酬は事務を履行した後でなければ請求できず、期間で報酬を定めたときはその期間が過ぎた後に請求できます(第2項、第624条第2項の準用)。 月額で報酬を決める SES の契約は、この形にあたります。

第3項は、委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったとき、または委任が履行の途中で終わったときに、 すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できると定めています。 改正前は「受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したとき」だけが対象でしたが、 2020年の改正で受任者側の事情で終わった場合も含む書き方に変わりました。

履行割合型との違い

履行割合型成果完成型
根拠の条文民法第648条民法第648条の2
報酬の対象事務の履行(時間・期間)履行によって得られる成果
請求できる時期履行の後。期間で定めたときは期間の経過後引渡しが要る成果は、引渡しと同時
途中で終わったときすでにした履行の割合に応じて請求できる(第648条第3項)可分な部分で委任者が利益を受けていれば、利益の割合に応じて請求できる(第634条の準用)
受任者の義務善管注意義務(第644条)同じ(第644条)

実務上いちばん大きいのは、途中で終わったときの精算です。 履行割合型は働いた分を割合で請求できますが、成果完成型は「委任者が利益を受けた可分な部分」があるかどうかが問われます。 たとえば調査の途中で契約が終わったとき、途中までの調査メモが委任者にとって使えるものかどうかで、請求できる額が変わりえます。

請負との違い

成果完成型は「成果に報酬を払う」点が請負と似ているため、混同されやすい類型です。 条文を並べると、違いは義務の中身にあります。

成果完成型の準委任請負
契約で約束するもの事務の処理(第656条・第643条)仕事の完成(第632条)
受注者の義務善管注意義務(第644条)仕事を完成させる債務
報酬の支払い時期引渡しが要る成果は、引渡しと同時(第648条の2第1項)目的物の引渡しと同時(第633条)
途中で終わったときどちらも第634条(可分な部分の利益の割合で報酬)
成果物の不具合第648条の2が準用するのは第634条だけ。請負の契約不適合の規定(第636条・第637条)は準用していない第636条・第637条に定めがある
解除各当事者がいつでも解除できる。相手方に不利な時期の解除などは損害賠償が必要(第651条)注文者は、完成前ならいつでも損害を賠償して解除できる(第641条)
再委託委任者の許諾か、やむを得ない事由が必要(第644条の2)民法に制限の規定はない

請負の受注者は仕事を完成させる債務を負うため、完成しなければ債務の不履行として損害賠償(第415条)の問題になりえます。 成果完成型の準委任は、成果が出なければ報酬が発生しないという報酬の定め方で、 完成そのものを義務づける条文は置かれていません。 ただし契約書に完成義務や検収・不具合対応の条項が書かれていれば、その条項に従うことになります。 請負と準委任のどちらで結ぶかの判断は 請負契約と準委任契約、どちらで契約すべきか で扱っています。

印紙税については、国税庁 No.7102 が「印紙税は、契約書に記載された内容により取扱いが異なります」としています。 成果物の完成と引渡しを中心に書いた契約書は、表題が準委任でも扱いが変わる可能性があるため、国税庁 No.7102 請負に関する契約書(2026年10月26日確認)を見たうえで、税理士か所轄の税務署に確認してください。

SES契約での使われ方

SES の個別契約は「月額○万円、精算幅140〜180時間、超過・控除は時間単価で精算」のように、 期間と時間で報酬を決めるものが多くを占めます。これは第648条の形で、履行割合型にあたります。 報酬が発生する根拠は、決めた期間に事務を処理したことです。

成果完成型の条項が入ってくるのは、次のような場面です。

  • 調査報告書・設計書・移行手順書など、区切りのよい成果物ごとに支払いたいと発注者が考えている
  • 上位の会社が発注者から請負や成果完成型で受けていて、その条件を下位の準委任にもそのまま書き写している
  • 「報酬は月額○万円。ただし成果物の検収をもって支払う」のように、両方の型が1つの条項に混ざっている

3つめの書き方は、報酬が期間に対するものか成果に対するものか読み取れず、 検収が終わらないあいだ月額を請求できるのかで争いになりやすい部分です。 また、上位が成果完成型・自社と協力会社の間が履行割合型という組み合わせだと、 成果が出ずに上位から入金がなくても、協力会社には稼働分を払う必要が生じます。商流の途中にいる会社ほど、上下の契約で報酬の型がそろっているかを見ておく必要があります。

指揮命令・偽装請負との関係

成果完成型でも、準委任契約であることに変わりはありません。 準委任では、発注者が受注者側のエンジニアに直接指揮命令することはできません。

厚生労働省の37号告示に関する疑義応答集(第3集)Q1 は、労働者派遣と請負の違いを「発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係を生じない」点に置いたうえで、 委任(第643条)・準委任(第656条)も同様であり、実態として指揮命令関係があれば 「その契約の形式を問わず、労働者派遣事業に該当」するとしています。 判断には37号告示の基準が使われ、契約書の形式より現場の実態が見られます。

成果に報酬が結びつくと、発注者は成果の出来を気にして、現場のエンジニアに直接やり直しや作業手順を伝えたくなります。 37号告示の第2条は、受注者が「労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと」を求めています。 発注者がエンジニアに直接手順を指示している状態は、この要件を受注者が満たしていないと見られる方向に働きます。

場面避けたい形指示の通し方
成果物の作り直し発注者の担当者がエンジニアに直接修正箇所と手順を指示する受注者側の責任者に修正の依頼を出し、責任者が作業を割り振る
納期が迫ったとき発注者がエンジニアに残業や休日の作業を求める納期の調整を事業主間で協議し、労働時間の指示は受注者が行う
成果の確認(検収)発注者がエンジニア個人を評価し、交代を指名する成果物を受け入れ基準で確認し、結果を受注者側の責任者に返す

実態が労働者派遣と判断され、許可なく労働者派遣事業を行ったことになれば、 労働者派遣法第59条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。 発注者側も、法の適用を免れる目的で請負など派遣以外の名目で契約して役務の提供を受けた場合、 その時点で労働者に労働契約を申し込んだものとみなされます(同法第40条の6第1項第5号。該当することを知らず、知らなかったことに過失もなかったときは除かれます)。 判断の基準と、SES で引っかかりやすい場面は 偽装請負とは で詳しく説明しています。

契約書で確認する点

  1. 報酬条項がどちらの型か。「成果」「引渡し」「検収」を基準にしていれば成果完成型、「月額」「精算幅」「稼働時間」を基準にしていれば履行割合型の書き方です。両方が混ざっていたら、どちらを基準に払うのか書き分けてもらう
  2. 成果の定義。何を渡せば成果とするのか、受け入れの基準と確認の期限が書かれているか
  3. 支払いの時期。引渡しと同時か、検収後の締め日か。検収が延びたときの扱い
  4. 途中で終わったときの精算。第634条の準用だけに任せると「委任者が受けた利益の割合」をめぐって争いになりやすいので、工程ごとの金額や出来高の測り方を決めておく
  5. 成果物の不具合の扱い。第648条の2は請負の契約不適合の規定を準用していないので、修補の範囲と期間を契約書で決める。逆に、請負と同じ責任が書かれていないかも見る
  6. 指揮命令の窓口。受注者側の責任者の氏名と、修正依頼・作業指示はその人を通すこと
  7. 解除と予告期間。第651条により準委任は各当事者がいつでも解除できるので、予告期間とその間の報酬を決めておく
  8. 再委託。第644条の2により委任者の許諾が要る。上位の契約で再委託の条件がどうなっているかと合わせて確認する

本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。 個別の契約については弁護士等の専門家に、偽装請負にあたるかどうかの個別の判断は各都道府県労働局にご相談ください。

よくある質問

準委任契約の成果完成型とは何ですか?

委任事務の履行によって得られる成果に対して報酬を支払うと約束した準委任契約のことです。2020年4月1日施行の改正民法で第648条の2が新設され、成果の引渡しが必要な場合は引渡しと同時に報酬を支払うこと、途中で終わった場合の報酬に請負の第634条を準用することが定められました。「成果完成型」は条文に出てくる言葉ではありません。実務上の呼び名です。

成果完成型の準委任と請負は同じものですか?

違います。請負は仕事の完成を約束する契約で(民法第632条)、受注者は完成させる債務を負います。成果完成型の準委任は、事務の処理を委託する準委任のまま、報酬の支払い方を成果に結びつけたものです。第648条の2は報酬についての規定で、受任者の義務は第644条の善管注意義務のままです。

成果完成型で成果が出なかったら、報酬はゼロですか?

成果に対して報酬を払う約束なので、成果が得られなければ原則として報酬は請求できません。ただし第648条の2第2項が第634条を準用しているため、成果を得られなくなったときや途中で契約が終わったときでも、すでにした仕事のうち可分な部分で委任者が利益を受けていれば、その利益の割合に応じて報酬を請求できます。

成果完成型なら、発注者がエンジニアに直接指示してもよいですか?

いけません。厚生労働省の37号告示に関する疑義応答集(第3集)は、委任・準委任も請負と同じく、実態として発注者と受注者側の労働者の間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣にあたるとしています。成果の確認や作り直しの依頼は、受注者側の責任者に対して行います。

参考にした公的統計・法令

本文の数字のうち、公的統計と比較できるものは下記を参照しています。 リンク先はいずれも発行元の原典です。

  1. e-Gov法令検索「民法(明治29年法律第89号)」—
    • 第632条(請負)/ 第643条(委任)/ 第656条(準委任)
    • 第648条の2(成果に対する報酬)
  2. 法務省「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)新旧対照条文」平成29年6月2日公布の改正法
    • 第648条の2(成果等に対する報酬)は「(新設)」
    • 第648条第3項は、履行の中途で終了したときの割合報酬の要件を広げた
  3. 法務省「民法(債権関係)改正法の施行期日について」—
    • 施行日は2020年(令和2年)4月1日
  4. 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号
  5. 厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)アジャイル型開発」令和3年9月公表 / 令和8年5月25日 Q8追加
    • Q8: Q1〜7の考え方はアジャイル型開発以外のシステム開発にも当てはまる
  6. e-Gov法令検索「労働者派遣法(昭和60年法律第88号)」—

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関連記事:準委任契約とは / 請負契約と準委任契約、どちらで契約すべきか / 偽装請負とは

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