単価・市場動向

案件が求める工程の組み合わせ|一貫より、上流に絞るほうが高い

#案件#工程#実データ
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執筆
Qasica 編集部

案件が「上流から下流まで一貫」なのか「一部だけ」なのかは、 要員を当てられるかどうかを大きく左右します。ところが、範囲の広さと単価はほとんど連動していません。工程が書かれた案件 183,548 件を、工程の組み合わせ単位で数え直しました。

結論|効くのは範囲の広さではなく上端

  • 工程が書かれている案件は 94.0%(183,548 / 195,223 件)。最も埋まりやすい項目のひとつ
  • 最多の工程は 開発 130,413 件、最少は 要件定義 56,664 件(全体の 30.9%)
  • 要件定義を含む案件の単価中央値は 80 万円、含まない案件は 70 万円
  • ただし 要件定義〜テストの一貫案件は 75 万円にとどまり、要件定義だけの案件(85 万円)より安い
  • 最も安いのは 運用保守のみ(55 万円)。案件としては 20,241 件あり2番目に多い形
  • 工程数を 1 → 6 に増やしても単価中央値は 65 → 78 万円しか動かない

「どこまで広くやるか」ではなく「どこまで上に入るか」で単価が決まっています。

集計の条件

集計日 2026年9月22日/n 工程記載のある案件 183,548 件。 単価を併記した数字は、そのうち単価記載あり・20〜200万円に限った 151,391 件が母数です。除外:status が削除済みのもの、工程が未記載のもの(11,675 件)、 単価の桁誤記を避けるため 20 万円未満・200 万円超のもの。 工程の値は抽出時に6区分(要件定義・基本設計・詳細設計・開発・テスト・運用保守)へ正規化しています。 「製造・構築」(26件)「単体テスト」(6件)「結合・総合テスト」(2件) という正規化漏れが わずかに残っていますが、合計 34 件なので集計には影響しません。この数字で分からないこと:案件メールに書かれた工程であって、 実際に従事する工程ではありません。 「開発」の一語だけで済ませている案件が 8,200 件あり、工程数が少ない=範囲が狭い、とは限りません。 また、単価と工程の関係には役割(PM / リーダー / メンバー)が交絡します (役割の効果は別の記事で分解しています)。

工程ごとの出現数と単価

工程出現案件数単価記載あり単価中央値出現の多さ
要件定義56,66445,23180万円
基本設計101,26980,48875万円
詳細設計101,71780,22470万円
開発130,413101,93870万円
テスト99,68778,31770万円
運用保守90,19772,26870万円

出現数では開発が 130,413 件で突出し、要件定義が 56,664 件で最も少ない。 要件定義まで任せる案件は、工程記載のある案件のうち 30.9% しかありません。

単価は要件定義 80 万円が頭ひとつ抜けていて、 基本設計 75 万円、あとは 70 万円で横並びです。詳細設計・開発・テスト・運用保守の間に差がないのは、 この4つがほぼ同じ案件にまとめて書かれるからです。

工程数を増やすと単価は上がるか

工程数件数割合単価中央値
1工程32,80521.7%65万円
2工程19,51012.9%70万円
3工程26,92117.8%70万円
4工程32,11121.2%70万円
5工程24,37216.1%75万円
6工程すべて9,2686.1%78万円

1工程 65 万円から6工程 78 万円まで、13 万円しか動きません。 しかも増え方は単調ではなく、2〜4工程はすべて 70 万円で横ばいです。

伸びるのは 5 工程(75 万円)と 6 工程(78 万円)に入ってからで、 これは工程数が増えた効果ではなく、5工程以上になると要件定義が入ってくる効果です。 次の節で分けて確認します。

実際に多い組み合わせ

工程の集合をそのまま組として数え、多い順に並べました。

組み合わせ件数単価中央値
基本設計 / 詳細設計 / 開発 / テスト23,36070万円
運用保守のみ20,24155万円
基本設計 / 詳細設計 / 開発 / テスト / 運用保守13,97270万円
要件定義 / 基本設計 / 詳細設計 / 開発 / テスト / 運用保守11,68878万円
要件定義 / 基本設計 / 詳細設計 / 開発 / テスト11,39575万円
開発 / 運用保守9,28969万円
詳細設計 / 開発 / テスト8,54765万円
開発のみ8,20065万円
要件定義のみ7,72685万円
開発 / テスト / 運用保守7,36268万円
基本設計 / 詳細設計 / 開発 / 運用保守7,11475万円
要件定義 / 基本設計 / 詳細設計1,97490万円

最多は「基本設計から テストまで、要件定義なし」の 23,360 件です。 いわゆる二次請け以下の開発案件の典型で、単価は 70 万円。

2番目に多いのが運用保守のみの 20,241 件。 この形だけが 55 万円と、他より 10 万円以上低く出ます。

そして注目したいのが要件定義のみの 7,726 件で 85 万円要件定義・基本設計・詳細設計の 1,974 件で 90 万円。 件数は少ないものの、どちらも一貫案件(75〜78 万円)より高い。

一貫案件は、上流特化より安い

範囲の取り方でグループ化し直します。

範囲件数単価中央値100万円以上の割合
要件定義を含む45,23180万円25.1%
要件定義〜テストの5工程すべて18,31775万円19.6%
要件定義を含まない99,75670万円9%
運用保守を含む72,26870万円13.2%
上流(要件定義・基本設計)を一切含まない53,27365万円6.8%
運用保守のみ16,57755万円6.9%

要件定義を含むかどうかで、単価中央値は 10 万円、 100 万円以上の比率は 9.0% → 25.1% と約 2.8 倍に開きます。これがこの記事でいちばん大きい差です。

一方で、要件定義からテストまで全部やる案件は 75 万円。 要件定義を含む案件全体の 80 万円より低く、 要件定義だけの案件(85 万円)よりさらに低い。

これは求めている人が違うからです。 一貫案件は「一人で全部回せる開発者」の募集で、単価は開発者の相場に引っ張られます。 対して上流だけに絞った案件はコンサル・アーキテクト寄りの募集で、別の相場に乗る。範囲を広げることは、単価を上げる方向には働いていません。

最下段の「上流を一切含まない」53,273 件が 65 万円、 100 万円以上はわずか 6.8%。下流だけの案件は、どれだけ工程を並べても 100 万円に届きません。

この比較は工程だけを見ていて、経験年数・役割・地域を揃えていません。 要件定義を含む案件に高単価が集まるのは、工程そのものというより そこに求められる経験年数の違いが効いている可能性があります (SESエンジニアの経験年数の分布では、 希望単価が伸びるのは 8 年目までであることを出しています)。

この数字の使い方

1. 「対応工程」の広さを売り文句にしない

スキルシートに工程を全部チェックしても、単価は上がりません。効くのは要件定義の1行が書けるかどうかで、 そこに実績があるなら工程一覧よりその案件の中身を書くほうが通ります (要員提案メールの型)。

2. 運用保守のみの案件を別枠で管理する

運用保守のみは 20,241 件と量があり、単価帯(55 万円)もはっきり分かれています。他の案件と同じリストで扱うと、単価の相場観が狂います。 経験年数の浅い層を当てる先としては、量が読める有力な区分です。

3. 上流を含む案件は、埋まらない理由を確認する

要件定義を含む案件は 100 万円以上が 25.1% ある一方、 要員側で上流の実績を書いている人は限られます。高単価の案件が回り続けているなら、単価ではなく条件のどこかが詰まっている可能性が高い(案件情報はいつまで有効か)。

よくある質問

なぜ一貫案件より上流だけの案件のほうが高いのですか?

求められている人が違うためです。要件定義だけの案件7,726件は中央値85万円、要件定義・基本設計・詳細設計の3工程だけの案件1,974件は90万円でした。これらはコンサルやアーキテクト寄りの募集です。一方、要件定義からテストまでの一貫案件は「一人で全部回せる開発者」の募集で、単価の相場は開発者の相場に引っ張られます。範囲が広いことは高さの理由になっていません。

運用保守だけの案件が55万円と低いのはなぜですか?

運用保守のみの案件は20,241件あり、工程の組み合わせとしては2番目に多い形です。経験年数の浅い層でも入れる定常業務が多く、単価の下限帯に集まります。ただし「運用保守を含む」案件全体で見ると中央値70万円で、運用保守そのものが安いのではなく、運用保守しか書かれていない案件が安い、という関係です。

工程が書かれていない案件はどう読めばいいですか?

工程が書かれている案件は94.0%で、未記載は1万1,675件です。必須スキルや契約形態に比べると記載率が高く、工程は案件メールで最も埋まりやすい項目のひとつです。ただし「開発」の一語だけで済ませている案件が8,200件あり、これは範囲が狭いのではなく書き方が粗いだけのことが多い。工程数が1つの案件は単価中央値65万円で最も低く出ますが、これも記載の粗さが混ざっています。

工程で絞り込む

Qasica は案件メールの工程を 6 区分に正規化して配列で保持し、 要員側の経験工程と突き合わせます。 「要件定義を含む案件だけ」「運用保守のみを除く」といった絞り込みができるので、 単価帯の違う案件を同じリストで眺めずに済みます。

関連記事:工程と役割で単価はどう変わるか / 案件が求める必須スキルは何個か / 案件メールの読み方

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