SESの精算幅とは|上下割・中間割・控除の計算例と、140〜180時間が72.8%の実態
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- Qasica 編集部
目次(9節)
SES の精算幅は、月額の単価で契約したときに「その単価のまま支払う稼働時間の範囲」です。 「単価70万円、精算幅140〜180時間」なら、140時間から180時間までは70万円ちょうど。 範囲を外れた分だけ、時間単価で差し引くか上乗せします。
この記事では、Qasica の独自調査から精算幅の実際の分布を出したうえで、 上下割・中間割・控除・超過の計算を数字の例で順に確かめます。 途中入場の月や、商流の上と下で精算幅がずれているときの損得も扱います。 SES の契約の全体像は SESとは、 営業の仕事の中での位置づけは SES営業とは にまとめています。
計算例の端数は「10円未満切り捨て」で揃えています。実際の端数処理や精算の時間単位(15分・30分など)は契約ごとに決まります。 本記事は一般的な整理であり、個別の契約についての法的助言ではありません。
精算幅とは
SES の多くは準委任契約で、報酬を「月額○万円」と期間で定めます。 民法第648条第2項は、期間によって報酬を定めた委任について、その期間が過ぎた後に報酬を請求できると定めています。 月額の契約はこの形にあたります。 ただ、月の稼働時間は祝日や業務量で上下するため、時間の増減をどこまで月額に含めるかを決めておく必要があります。 それが精算幅です。
| 用語 | 意味 | 例(70万円・140〜180時間) |
|---|---|---|
| 下限時間 | これを下回ると控除する時間 | 140時間 |
| 上限時間 | これを超えると超過分を払う時間 | 180時間 |
| 控除(不足精算) | 下限に足りない時間 × 控除単価を差し引く | 130時間なら10時間分を差し引く |
| 超過(超過精算) | 上限を超えた時間 × 超過単価を上乗せする | 190時間なら10時間分を上乗せ |
| 上下割 | 控除単価=月額÷下限、超過単価=月額÷上限 | 控除5,000円/超過3,880円 |
| 中間割 | 控除・超過とも月額÷(下限と上限の中間) | どちらも4,370円 |
| 固定(精算なし) | 時間にかかわらず月額のまま | 何時間でも70万円 |
精算幅は、案件メールでは「精算:140-180h(上下割)」のように単価の近くに書かれます。 表記の揺れが大きい項目で、同じ140〜180時間でも「140h~180h」「140H 〜 180H」「140~180時間」など何通りも見かけます。
実データで見る精算幅|72.8%が140〜180時間
Qasica の独自調査で、2026年4月6日から10月30日までに出回った案件のうち、再送などの重複を除いた97,706件を集計しました。 精算幅の欄に何か書かれていたのは47,738件(48.9%)。 約半数の案件は、精算幅を書かないまま流通していることになります。
下限と上限の両方が読み取れた42,759件の組み合わせは次のとおりです。
| 精算幅 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 140〜180時間 | 31,117 | 72.8% |
| 140〜200時間 | 3,843 | 9.0% |
| 140〜190時間 | 2,032 | 4.8% |
| 150〜180時間 | 1,787 | 4.2% |
| 150〜200時間 | 1,639 | 3.8% |
| 150〜190時間 | 1,080 | 2.5% |
| それ以外 | 1,261 | 2.9% |
- 下限は140時間が86.8%、150時間が10.8%。ほぼこの2つです
- 上限は180時間が77.7%、200時間が13.0%、190時間が7.7%
- 幅(上限−下限)は40時間が75.7%。60時間が9.4%、50時間が8.8%
精算幅の欄に書かれていたもののうち「固定」「精算なし」は1,647件(3.5%)でした。 精算方法まで書かれているものは少なく、「上下割」の記載が1,588件、「中間割」(中割・センター割を含む)が349件で、合わせても精算幅が書かれた案件の4.1%です。 精算幅は書いてあっても、控除・超過の単価の出し方は契約の段階まで分からないことが多い、ということです。
集計は Qasica の独自調査で集めた案件情報の記載を数えたもので、特定の会社や案件が分かる情報は含めていません。 1件の案件情報に書かれた精算幅を1件とし、表記の揺れ(h・H・時間、ハイフン・波線など)はそろえてから数えました。 重複の判定は Qasica の重複判定によります。案件情報に書かれた条件であり、実際に結ばれた契約の条件とは異なることがあります。
上下割の計算例
上下割は、控除するときは月額を下限時間で割り、超過を払うときは月額を上限時間で割る方式です。 月額70万円・精算幅140〜180時間で計算します。
- 控除単価:700,000円 ÷ 140時間 = 5,000円
- 超過単価:700,000円 ÷ 180時間 = 3,888.8…円 → 3,880円(10円未満切り捨て)
| その月の稼働 | 計算 | 支払額 |
|---|---|---|
| 130時間 | 700,000 − 10時間 × 5,000 | 650,000円 |
| 140時間 | 範囲内 | 700,000円 |
| 165時間 | 範囲内 | 700,000円 |
| 180時間 | 範囲内 | 700,000円 |
| 190時間 | 700,000 + 10時間 × 3,880 | 738,800円 |
上下割では、控除単価(5,000円)が超過単価(3,880円)より高くなります。 足りない1時間は高く引かれ、超えた1時間は安く払われるので、発注側に有利な方式です。 その代わり、範囲内なら月額がそのまま払われるので、どちらの単価も「範囲内の1時間あたり」の単価からかけ離れてはいません。
中間割の計算例
中間割は、下限と上限の中間の時間で月額を割り、その1つの単価で控除も超過も計算する方式です。 同じ月額70万円・140〜180時間なら、中間は160時間です。
- 精算単価:700,000円 ÷ 160時間 = 4,375円 → 4,370円(10円未満切り捨て)
| その月の稼働 | 計算 | 支払額 |
|---|---|---|
| 130時間 | 700,000 − 10時間 × 4,370 | 656,300円 |
| 140〜180時間 | 範囲内 | 700,000円 |
| 190時間 | 700,000 + 10時間 × 4,370 | 743,700円 |
中間割は控除と超過が同じ単価なので、どちらの側にも偏りません。 「中割」「センター割」と書かれることもあります。
上下割と中間割を並べる
同じ月額・同じ精算幅でも、方式によって支払額が変わります。 範囲から外れた時間が大きいほど、差も広がります。
| その月の稼働 | 上下割 | 中間割 | 差(中間割−上下割) |
|---|---|---|---|
| 120時間(20時間不足) | 600,000円 | 612,600円 | +12,600円 |
| 130時間(10時間不足) | 650,000円 | 656,300円 | +6,300円 |
| 190時間(10時間超過) | 738,800円 | 743,700円 | +4,900円 |
| 200時間(20時間超過) | 777,600円 | 787,400円 | +9,800円 |
不足でも超過でも、中間割のほうが受注側(エンジニアを出す側)の受け取りが多くなります。 逆に言えば、発注側は上下割を、受注側は中間割を望むのが自然です。 どちらで合意したかは、請求書を出す月になって初めて問題になることが多いので、契約の前に書面で決めておきます。
精算幅の広さも効きます。 同じ70万円でも、140〜200時間の上下割なら超過単価は700,000÷200=3,500円で、 200時間までは何時間働いても70万円のままです。 独自調査では1割ほどの案件がこの幅でした。単価だけを比べて「同じ70万円」と判断すると、時間あたりでは差が出ます。
固定精算と、幅の広い契約
「固定」「精算なし」は、稼働時間にかかわらず月額のままの契約です。 月の稼働が安定している常駐の運用・保守の案件などで見かけます。 受注側は不足月に引かれない代わりに、超過しても上乗せがありません。
精算幅は時間で報酬を増減させる仕組みですが、準委任である以上、発注者がエンジニアに直接残業や休日出勤を指示することはできません。 上限を超えそうな月は、発注者と受注者の責任者の間で業務量や納期を調整します。 現場で直接指示が出ている状態は偽装請負と見られる方向に働きます。 判断の基準は 偽装請負とは を見てください。
途中入場・営業日の少ない月
月の途中から参画する月や、契約が月の途中で終わる月は、月額と精算幅をどう縮めるかを決めておく必要があります。 よく使われるのは、その月の営業日に対する稼働日の割合で、月額と精算幅の両方を縮める方法です。
たとえば営業日20日の月に、11日目から参画して10日稼働した場合。
- 月額:700,000円 × 10 ÷ 20 = 350,000円
- 精算幅:140〜180時間 × 10 ÷ 20 = 70〜90時間
- 実稼働が65時間なら、上下割の控除単価は 350,000 ÷ 70 = 5,000円で、5時間 × 5,000 = 25,000円を差し引き 325,000円
月額だけを日割りして精算幅を縮め忘れると、70時間しか働けない月に140時間の下限が残り、大きな控除が出てしまいます。 ほかに、暦日で割る方法や、日割りにせず下限だけを営業日数×8時間などに下げる方法もあります。 ゴールデンウィークや年末年始のように営業日が少ない月に下限を下げるかどうかも、契約によって違います。
商流の上と下で精算幅がずれると
精算幅は契約ごとに決まるので、自社と上位の会社の契約と、自社と協力会社の契約で条件がずれることがあります。 間に入る会社にとって、ずれは利益にも損にもなります。 商流の段数と取り分については IT業界の多重下請け構造 で実データを出しています。
例として、上位から月額80万円、協力会社へ月額70万円で、エンジニアが195時間稼働した月を考えます(どちらも上下割)。
| 上位との契約 | 協力会社との契約 | 自社の粗利 | |
|---|---|---|---|
| ケースA | 140〜180時間:800,000 + 15時間 × 4,440 = 866,600円を受け取る | 140〜200時間:範囲内で700,000円を払う | 166,600円 |
| ケースB | 140〜200時間:範囲内で800,000円を受け取る | 140〜180時間:700,000 + 15時間 × 3,880 = 758,200円を払う | 41,800円 |
精算幅がそろっていれば粗利は100,000円前後で安定しますが、ずれていると同じ稼働でも12万円以上の差が出ます。 ケースBのように下位の幅のほうが狭いと、繁忙月ほど自社の取り分が削られます。 協力会社と契約するときは、上位の契約の精算幅と精算方法を先に確かめ、同じかそれより広い幅でそろえるのが無難です。 商流の数え方は 商流とは で整理しています。
契約前に確認する点
- 下限・上限の時間。案件メールに書かれていなければ、提案の前に聞く(独自調査では約半数が未記載)
- 精算方法。上下割か中間割か、固定か。案件情報に書かれているのは一部だけ
- 端数処理。控除・超過単価の円未満、10円未満の扱い
- 精算の時間単位。15分・30分・1時間のどれで集計するか
- 途中入場・途中終了の月の扱い。月額と精算幅を同じ割合で縮めるか
- 営業日の少ない月の下限。下げるのか、そのままか
- 上位の契約と下位の契約で、精算幅と方式がそろっているか
- 稼働時間の報告の締め日と、承認する人
提案の段階では、要員の希望単価と一緒に「希望する精算幅・固定の可否」も添えると、面談後の条件の詰めが早くなります。 スキルシートに専用の欄が無い場合は、紹介メールの本文に書きます。 書き方は スキルシートのテンプレートと通る書き方、 面談前にそろえておく条件は 面談前に揃えておく情報 にまとめています。
本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の契約については弁護士等の専門家にご相談ください。 民法第648条は2026年10月30日に e-Gov 法令検索(法令API)で確認しました。
よくある質問
SESの精算幅とは何ですか?
月額の単価で契約したときに、その単価のまま支払う稼働時間の範囲のことです。「140〜180時間」なら、稼働が140時間以上180時間以下の月は月額どおりに支払い、140時間を下回れば不足分を差し引き(控除)、180時間を超えれば超過分を上乗せします。
上下割と中間割はどちらが多いですか?
Qasica の独自調査では、精算幅の欄に精算方法まで書かれていた案件は少数でした。重複を除いた案件のうち精算幅が書かれた47,738件で、「上下割」の記載は1,588件、「中間割」(中割・センター割を含む)の記載は349件で、合わせても4.1%です。書かれていない案件は、契約前に必ず確認してください。
月額70万円・精算幅140〜180時間で、130時間しか稼働しなかったらいくらですか?
上下割なら控除単価は70万円÷140時間=5,000円で、不足10時間分の50,000円を差し引いて650,000円です。中間割なら70万円÷160時間=4,375円(10円未満切り捨てで4,370円)で、43,700円を差し引いて656,300円になります。端数の扱いは契約で決めます。
精算幅を超えて働いたら、その分は必ず支払われますか?
契約に超過精算の定めがあれば、超過時間に超過単価を掛けた額が上乗せされます。「固定」「精算なし」の契約では、月額から増減しません。また、準委任契約では発注者がエンジニアに直接残業を指示することはできないため、超過が見込まれるときは事業主間で業務量を調整します。
参考にした公的統計・法令
本文の数字のうち、公的統計と比較できるものは下記を参照しています。 リンク先はいずれも発行元の原典です。
- e-Gov法令検索「民法(明治29年法律第89号)」
- 第632条(請負)/ 第643条(委任)/ 第656条(準委任)
- 第648条の2(成果に対する報酬)
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」
案件ごとの精算条件を読み落とさない
精算幅は単価のすぐ隣に、表記を変えて書かれます。 Qasica は案件メールから単価・契約形態・商流・精算幅を読み取って構造化し、条件の合わない提案を先に弾きます。
関連記事:SES営業とは / IT業界の多重下請け構造 / スキルシートのテンプレート / 準委任契約とは
このコラムを書いている Qasica について
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