SESとは|契約・お金・働き方を19.5万件の案件データで整理する
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- Qasica 編集部
SES の説明は「エンジニアを客先に常駐させる働き方」で止まっているものがほとんどです。 それだと派遣と何が違うのかも、単価がどう決まるのかも分かりません。 この記事では、実際に流通している案件 195,366 件・要員 175,093 件の集計で、 契約・お金・案件の中身を具体的な数字にします。
SESとは
SES は System Engineering Service の略で、エンジニアの技術力(労働時間)を提供する契約を指す商習慣上の呼び方です。 法律上の契約類型ではなく、これを実現する契約として準委任契約が使われます。
成果物の完成を約束しないのが特徴です。請負は「完成」に対して報酬が出ますが、 SES は決められた時間、善良な管理者の注意をもって業務にあたることに対して報酬が出ます。 バグが残っていても契約上の債務不履行にはならない、というのが実務上の一番大きな違いです。
準委任・派遣・請負の違い
3つの違いは、次の2点にほぼ集約されます。
| 項目 | 準委任(SES) | 派遣 | 請負 |
|---|---|---|---|
| 指揮命令 | 所属会社 | 派遣先 | 所属会社 |
| 完成義務 | なし | なし | あり |
| 報酬の対象 | 業務の遂行 | 労働時間 | 仕事の完成 |
| 許可 | 不要 | 必要(厚労大臣) | 不要 |
| 根拠 | 民法656条・643条 | 労働者派遣法 | 民法632条 |
実務で問題になるのは 1行目の指揮命令です。契約書が準委任でも、 発注側が直接エンジニアに指示を出していれば実態は派遣とみなされ、 許可なく行えば偽装請負になります。 判断基準は厚生労働省の37号告示に定められています。
2020年の民法改正で、準委任にも成果完成型(第648条の2)が加わりました。 成果に対して報酬を払う準委任なので、従来の「履行割合型」とは扱いが変わります。 どちらの型かは契約書で決まるので、SES だから完成義務は無い、と一律には言えません。
実データで見る契約形態の分布
契約形態が書かれていた案件 112,102 件の内訳です。
| 契約形態 | 件数 | 割合 | 単価の中央値 |
|---|---|---|---|
| 準委任 | 94,118 | 84.0% | 70万円 |
| 派遣 | 17,618 | 15.7% | 67万円 |
| 請負 | 366 | 0.3% | 75万円 |
83.9%が準委任で、派遣は15.7%、請負は0.3%しかありません。 単価の中央値は準委任70万円に対して派遣67万円で、差は3万円です。契約形態そのものが単価を大きく動かしているわけではありません。
集計日 2026年9月22日/案件 195,366 件(status が削除済みのものを除く)のうち、 契約形態の記載があった 112,132 件。単価は上限単価(無ければ下限単価)が20〜200万円の範囲にあるもの。契約形態が書かれているのは案件全体の57.4%だけなので、 この分布は「書いてある案件の中での割合」です。
お金はどう流れるか
SES の単価は提示単価、つまり要員を提案する会社が「この人はいくらです」と 出す金額です。エンジニア本人の給与ではありません。間には次のものが入ります。
- 社会保険料の会社負担分
- 間接部門の人件費(営業・経理・総務)
- 待機期間の人件費
- 会社の利益
公的統計と並べると、この開きの大きさが分かります。
| 何の金額か | 月額 | 誰が受け取るか |
|---|---|---|
| 本調査の提示単価(中央値) | 68.0万円 | 所属会社 |
| 派遣料金の平均(8時間換算 × 20日) | 52.5万円 | 派遣元 |
| 情報通信業の賃金 | 40.6万円 | 本人 |
どの統計で見ても単価と本人の賃金には20万〜30万円の開きがあります。 「単価 × 12 が年収になるはず」という比較は、公的統計の水準とも合いません。 内訳はSESの年収で分解しています。
どんな案件が多いか
案件メールに何が書かれているかを、記載率で見ます。
| 項目 | 記載あり | 割合 |
|---|---|---|
| 必須スキル | 192,936 | 98.8% |
| 勤務地 | 179,505 | 91.9% |
| 勤務形態 | 166,615 | 85.3% |
| 単価 | 152,120 | 77.9% |
| 商流 | 147,333 | 75.4% |
| 契約形態 | 112,132 | 57.4% |
必須スキルはほぼ必ず書かれる(98.8%)のに、契約形態は57.4%しか書かれていません。 準委任か派遣かは後から効いてくる条件なのに、案件メールの段階では 半分近くが未記載だ、ということです。
勤務形態は常駐41.8%、リモート可37.5%、フルリモート12.6%、ハイブリッド8.1%。何らかの形でリモートが可能な案件は58.2%あります (リモート比率の詳細)。
単価は経験年数に連動しますが、伸び方は一定ではありません。
| 経験年数 | 件数 | 中央値 |
|---|---|---|
| 3年未満 | 16,781 | 50万円 |
| 3〜5年 | 21,186 | 60万円 |
| 5〜10年 | 39,937 | 68万円 |
| 10〜15年 | 20,210 | 75万円 |
| 15年以上 | 42,310 | 75万円 |
3年未満の50万円から5〜10年の68万円までは伸びますが、10〜15年と15年以上はどちらも75万円で止まります。 年数を重ねるだけでは単価が上がらなくなる、という分かりやすい形が出ています。
SESの長所と短所
数字から見える範囲で整理します。感想ではなく、上で出した分布に対応する形で書きます。
| 観点 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 働き方 | リモート可の案件が58.2%あり、選択肢がある | 常駐が41.8%。案件単位で決まるので自分では選べない |
| 単価 | 経験5〜10年で中央値68万円。年数が素直に効く | 10年を超えると中央値が伸びない(75万円で頭打ち) |
| 契約 | 完成義務が無く、成果物の瑕疵を負わない | 契約形態が書かれた案件は57.4%。事前に分からないことがある |
| 案件の幅 | 必須スキルの記載は98.8%。条件が明確で選びやすい | 商流の92.8%が「貴社まで」。提案できる相手が限られる |
この数字で分からないこと
- エンジニア本人の給与。ここで扱ったのはすべて提示単価で、 所属会社の配分ルールまでは分かりません
- 成約したかどうか。集計対象は流通した案件・要員の情報であって、 実際に契約に至った案件ではありません
- 契約形態の未記載分。57.4%しか書かれていないので、 残り42.6%が準委任に偏っているのか派遣に偏っているのかは判断できません
- 企業ごとの差。会社単位の比較はしていません
よくある質問
SESと派遣は何が違いますか?
指揮命令をどちらが出すかが決定的な違いです。派遣は派遣先が直接指示を出せますが、SES(準委任)では指示を出せるのは所属会社だけです。発注側が直接指示を出していると、契約書が準委任でも偽装請負と判断されます。判断基準は昭和61年労働省告示第37号に定められています。
SESは準委任契約と同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には別です。SESは「エンジニアの技術力を提供するサービス」という商習慣上の呼び方で、それを実現する契約形態として準委任が使われます。実データでも契約形態が書かれた案件の83.9%が準委任でした。ただし15.7%は派遣契約で、SESと呼ばれる取引のすべてが準委任というわけではありません。
SESの単価はどう決まりますか?
経験年数と、担う役割・工程で決まります。実データでは経験3年未満が50万円、5〜10年で68万円、10年以上で75万円が中央値でした。ただし10年を超えると中央値は伸びず、代わりに上位層との差が開きます。役割の差のほうが工程の差より大きく、コンサルやPMは中央値90万円を超えます。
SESは違法ではないのですか?
適法です。準委任契約は民法第656条・第643条に定めのある契約で、それ自体に問題はありません。違法になるのは、実態が労働者派遣なのに派遣の許可を取らずに行っている場合(偽装請負)や、間に入った会社がさらに人を供給する多重派遣の場合です。
参考にした公的統計・法令
本文の数字のうち、公的統計と比較できるものは下記を参照しています。 リンク先はいずれも発行元の原典です。
- e-Gov法令検索「民法(明治29年法律第89号)」
- 第632条(請負)/ 第643条(委任)/ 第656条(準委任)
- 第648条の2(成果に対する報酬)
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」
- 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
- 派遣料金(8時間換算)の平均 26,257円(前年度比 +3.6%)
- 派遣労働者の賃金(8時間換算)の平均 16,735円(+3.4%)
- 年間売上高 9兆9,005億円 / 派遣労働者 約220万人
全業種の派遣が対象。SES に多い準委任契約は含まれない
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(産業別にみた賃金)」
- 情報通信業の賃金 40.6万円(男女計・年齢計、前年比 +3.8%)
- 同 平均年齢 40.2歳 / 平均勤続 12.3年
所定内給与額。本人の給与であり、取引上の単価ではない
- e-Gov法令検索「労働者派遣法(昭和60年法律第88号)」
案件の条件を読み違えないために
契約形態・商流・単価・勤務形態は、どれも提案前の足切り条件です。 Qasica は案件メールからこれらを個別の項目として抽出して構造化し、 条件の合わない提案を先に弾きます。
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