SES企業とは|収益の仕組みと、17.5万件の要員データで見る実態
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- Qasica 編集部
目次(8節)
SES企業の説明は「エンジニアを客先に常駐させる会社」で終わっているものが多く、どこで利益が出ているのかも提案されるエンジニアが本当にその会社の社員なのかも書かれていません。 ここでは実際に流通している要員情報 175,093 件の集計と、厚生労働省の統計の両方で整理します。
SES企業とは
SES企業は、自社のエンジニアの技術力を他社に提供して対価を得る会社です。 契約形態は準委任が中心で、 エンジニアは発注側の職場で働きますが、指揮命令を出すのは所属する SES企業です。
受託開発会社との違いは、成果物ではなく時間を売っている点です。 受託は「このシステムを作って納める」に対して報酬が出ますが、 SES は「この人が月160時間働く」に対して報酬が出ます。 そのため開発の失敗リスクを負わない代わりに、単価の上限も決まりやすくなります。
どこで利益が出るか
収益の構造は単純で、提示単価とエンジニアに払う人件費の差です。 厚生労働省の集計(全業種の派遣、令和6年度)では次のようになっています。
| 項目 | 8時間あたり | 月額換算(20日) |
|---|---|---|
| 派遣料金(発注側が払う) | 26,257円 | 52.5万円 |
| 派遣労働者の賃金(本人が受け取る) | 16,735円 | 33.5万円 |
| 差 | 9,522円 | 19.0万円 |
差は料金の 36.3% です。ただしこれは丸ごと利益ではありません。 ここから社会保険料の会社負担・間接部門の人件費・待機期間の人件費が引かれます。 待機は売上ゼロで人件費だけが出ていく期間なので、稼働率がそのまま収益性になるのがこのビジネスの性格です。
厚生労働省の数字は全業種の派遣が対象で、SES に多い準委任契約は含まれていません。 月額換算は20営業日として本記事が計算したもので、厚生労働省の公表値ではありません。 派遣料金は消費税を含む額です。
提案される要員は自社社員か
「SES企業から提案されたエンジニア」が、その会社の社員とは限りません。 要員情報に所属の記載があった 166,573 件の内訳です。
| 所属 | 件数 | 割合 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 自社社員 | 113,389 | 68.1% | その会社が直接雇用しているエンジニア |
| 1社先 | 46,002 | 27.6% | 協力会社の社員(1社挟む) |
| グループ会社 | 7,182 | 4.3% | 同じ資本系列の会社の社員 |
約3割は自社社員ではありません。1社先が27.6%、グループ会社が4.3%です。 悪いことではなく、必要な人数と技術を1社で揃えられないのが普通だからですが、間に会社が入るぶん発注側の支払いは増えます。 構造の詳細は多重下請け構造にまとめています。
所属で単価はどれだけ変わるか
経験年数の差が混ざらないよう、経験5〜10年の層だけで比べます。
中央値は 1社先 70万円、自社社員 67万円、グループ会社 55万円。1社挟むと提示単価は約5万円上がります。 提案する会社が自社のマージンを乗せるためで、 その5万円はエンジニア本人ではなく間に入った会社に渡ります。
箱(25〜75%)を見ると、1社先と自社社員は大きく重なっています。 中央値の差だけを見て「協力会社は高い」と決めつけられる差ではありません。
集計日 2026年9月22日/単価は下限単価(無ければ上限単価)が20〜200万円の範囲にあるもの。 ここでの単価は提示単価で、エンジニア本人の給与ではありません。 所属は提案元の自己申告であり、実際の雇用関係を確認したものではありません。
公的統計から見た業界の規模
SES企業そのものを数えた公的統計はありませんが、近いものが2つあります。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者として派遣されている労働者 | 197,425人 | 厚労省・令和7年6月1日 |
| うち無期雇用 | 85.6% | 同上 |
| (参考)派遣労働者全体の無期雇用比率 | 43.5% | 同上 |
| 2030年のIT人材の需給ギャップ(中位) | 45万人 | 経産省・2019年推計 |
注目すべきは無期雇用の比率です。派遣労働者全体では43.5%なのに、IT だけが85.6%と際立って高い。 「自社の正社員を他社で働かせる」という形が IT に集中していることを示しています。 制度としての特定派遣は2018年に無くなりましたが、 働き方そのものは許可制の下で残っている、というのが数字から見える実態です (特定派遣の廃止)。
発注側から見た確認ポイント
会社の規模や知名度よりも、契約前に事実として確認できることを並べます。
- 契約形態が書面で明確か — 準委任か派遣かで指揮命令の扱いが変わります。 案件メールの段階で契約形態が書かれているのは57.4%しかありません
- 提案された要員の所属 — 自社社員か1社先か。 間に会社が入ると同じ経験年数でも支払いは約5万円上がります
- 労働者派遣事業の許可 — 派遣として受けるなら必須です。 許可番号は厚生労働省の人材サービス総合サイトで確認できます
- 指揮命令の線引き — 準委任で受けるなら、 発注側が直接指示を出す運用になっていないか。偽装請負の判断基準は37号告示にあります
この数字で分からないこと
- 会社ごとの比較。この記事では企業名を挙げたランキングは扱っていません。 集計は案件・要員の情報を対象にしたもので、会社単位の評価はできません
- 所属の真偽。所属は提案元の自己申告です
- 利益率。派遣料金と賃金の差36.3%は全業種の派遣の数字で、 そこから経費を引いた後の利益率は分かりません
- 稼働率。収益を左右する最大の要素ですが、 流通している情報からは測れません
よくある質問
SES企業と派遣会社は違いますか?
契約形態が違います。SES企業は準委任契約で技術力を提供し、指揮命令は自社が出します。派遣会社は労働者派遣契約で、指揮命令は派遣先が出します。ただし実態としては両方を扱う会社が多く、実データでも契約形態が書かれた案件の15.7%は派遣契約でした。看板ではなく個々の契約で判断してください。
SES企業の利益はどこから出ていますか?
提示単価とエンジニアに支払う人件費の差です。厚生労働省の集計では、派遣料金の平均が8時間あたり26,257円、派遣労働者の賃金が16,735円なので、差は9,522円(料金の36.3%)になります。これは全業種の派遣の数字でSESそのものではありませんが、水準感としては近く、この差から社会保険料の会社負担・間接部門・待機期間の人件費・利益がまかなわれます。
提案された要員がその会社の社員かどうかは分かりますか?
要員情報に「所属」として書かれていることが多く、実データでは所属の記載があった166,796件のうち68.0%が自社社員、27.6%が1社先でした。ただしこれは提案側の自己申告です。商流の段数と併せて、契約前に確認することをおすすめします。
大手SES企業のほうが安心ですか?
この記事では企業ランキングは扱っていません。規模と品質は別の指標で、実データからは会社単位の比較ができないためです。判断材料にするなら、労働者派遣事業の許可の有無、商流の段数、契約形態が書面で明確かといった確認できる事実のほうが有効です。
参考にした公的統計・法令
本文の数字のうち、公的統計と比較できるものは下記を参照しています。 リンク先はいずれも発行元の原典です。
- 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
- 派遣料金(8時間換算)の平均 26,257円(前年度比 +3.6%)
- 派遣労働者の賃金(8時間換算)の平均 16,735円(+3.4%)
- 年間売上高 9兆9,005億円 / 派遣労働者 約220万人
全業種の派遣が対象。SES に多い準委任契約は含まれない
- 厚生労働省「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」
- 情報処理・通信技術者の派遣労働者 197,425人(全業務の9.8%)
- うち無期雇用 169,018人(同区分の85.6%)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(産業別にみた賃金)」
- 情報通信業の賃金 40.6万円(男女計・年齢計、前年比 +3.8%)
- 同 平均年齢 40.2歳 / 平均勤続 12.3年
所定内給与額。本人の給与であり、取引上の単価ではない
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」
- 2030年のIT人材の需給ギャップ 中位45万人(高位79万人・低位16万人)
- 2018年時点のギャップ 22万人
2019年時点の推計。「2030年に79万人不足」はこの高位シナリオの数字
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」
提案元と所属を取り違えない
所属と商流は、単価にも契約にも効いてくる条件です。 Qasica は要員情報から所属を、案件メールから商流条件を読み取って突き合わせ、 条件の合わない組み合わせを先に外します。